NEW MARS ,NO GOAL

思えば2002年、僕が初めて彼らのライブを生で見たとき、ちょうど所属していたレーベルを喧嘩別れで脱退した直後で、一度つかみかけた光をはからずも失った感が見てとれて痛々しかった。長いイベントだったんだけど、共演者とも絡まず、物販の奥でうつむき加減に一人タバコを吸ってる姿は少し異様だったように思う。肝心のライブも正直今のライブと比べるとグルーブ感が圧倒的に不足してたし。なんとなく、全体的に悲壮感が漂う第一印象だった。

それから。彼らはそんな日本を飛び出し、アメリカに籍を移した。そして程なくインディーズシーンで成功を収めた。そして、2005年に再来日した彼らは、これがあの時と同じバンドかと思うほどの圧倒的なグルーブとパフォーマンス、1曲1曲に芽生えた重量を持った熱をまざまざと僕に見せつけてくれた。きっと、大くんという「彼らの一番のファン」がリズム隊にがっちり入り込み、公私に渡り核となる二人と連携を強めた事も大きかったと思う。そしてその一体感があって、ライブの力だけでアメリカ、ヨーロッパの地元バンドをねじ伏せ圧倒する事が出来たことが、今のmwの確固たる基盤となっているように思う。

数々の挫折や不理解に満ち溢れた日本に戻ってから、年間100本を超えるライブを行ない、全国を文字通り津々浦々周りながら、外国で培った自信を胸に、対バンを「ぶっ潰す」意気込みで廻っていた彼ら。その抗う強い心は、彼らがブッキング相手を"with" ではなく"VS"で表してきたことにも伺える。そして。その中で志を共有できる制作チームに出会い、お互いを尊敬しあうバンド仲間に出会い、そして彼らを心から信じてくれるオーディエンスに出会い、その環が広がり続けて約5年。結成して10年。いつからか"VS"は"with"に戻り、ようやく彼らは母国で、心を開き、音楽に向き合えるようになったんだと思う。

キーワードは「感謝」。

そんな感謝の気持ちを彼らなりの美しいメロディーに乗せて、そしてそれでも「俺達はまだまだやるぜ」という次への気持ちを不協和音に乗せて、生み出された彼らの、そして僕らの新しい音楽。NEW MARS。

「キッズ、暴れるだけが、ロックじゃないぜ!」