落ち着いたところでレビュー

新アルバムの出来は近来稀に見る完璧さ。4年ぶり日本復帰で名刺代わりとはうまく言ったもので、「今のマイウェイ」「今までのマイウェイ」が絶妙に絡み合い、振り幅も制限しているようでいろんな面を見せてるようで、アルバムとしての統一感を「今のマイウェイ」で持たせつつ飽きの来ないバラエティさを組み込む、その高度なテク。圧巻です。
1.KILL YOUR IDOL
なんと言ってもその臨場感でしょう。リズム隊は厚く胸に迫り、最近のマイウェイアイデンティティーのオリエンタルなギターフレーズを中心に息つく暇のない圧倒的なスピードとパワーで4分半の1曲を終えてしまう。後に残るのは虚脱感。大きなモノに体ごとぶっ飛ばされたような感覚。色にたとえれば黒。しかも深い黒。それが重々しく等間隔のビートを刻んで聞く者に迫ってくる、怖い。そんな感じ。音楽的なことは詳しくないので論評は控えますが、そんなことはどうでもよくなるライブで聴くのが楽しみな1曲でした。(音源でアレ?という曲もライブで聞くととてつもない曲に変わってる彼らですから、どんななっちまうんだ?)
2.otokonokoonnanoko
卑猥な単語連発の1曲。1曲目からの勢いは変わらず、少し軽くなった分上下幅抑揚の激しい純パンクロックナンバー。軽くなったとはいえリズム隊の的確で安定感あるプレーは1曲目と変わらないため、重くて軽やかそして少し遊んだ歌詞のバランスが絶妙。この1,2曲目で僕は完全に逝っちゃいました・・・。
3.BEEF
ラジカルなギターフレーズが全編を彩るミディアムナンバー。これは評価しづらいなー。なにせ1,2曲目と4曲目がアレだから。ほんとに。すごいので。
4.THE RAINBOW SONG
昨日の時点でネタばれさせたくなかったので、あえてその曲の中身については触れなかったのですが、あえて言います。「A WAKE?」。(A WAKEとは・・・彼らの黒歴史、デリシャスレーベルからの初単独音源に収録されている、mwml史上最高のポップチューン。人気高い。)なんですよ。ほんとに。最近のマイウェイさんからは考えられないこの位置でのドポップソング配置。アルバム全体(ジャケットを含め)に流れる邪悪な雰囲気からは想像できない美しすぎるメロディーライン。これが4曲目にねぇ。村田氏の中にあるポップソングライティングの種が、アーティストとしての立ち位置などぶっ飛ばして、清らかに現れた、そんな感覚。いわゆる「dedicated to an〜」の頃のオルタナティブとポップの比率が5:5だった頃の曲調がここで復活したわけです。そこに僕は驚きを隠しきれないのです。嬉しい驚きが。村田さん。おかえり。
5.INTERNATIONAL XX
2004年の北米ツアー時から演奏されてた曲。ライブのグルーブがぎゅ−んと詰まってる感じ、といったらいいでしょうか。自然と体が動き出す、私もライブで2回ほど体験していましたが、うん、ほぼ体現化できてます。1曲目といい、ライブの熱感を音源に閉じ込めることに(もちろん100%は無理ですが)成功していますよ。
6.SPEED VS DISCORD〜SPAZZ YOU
これはたしか2005ヨーロッパツアーの前後からライブではおなじみの曲。仮曲名”カマロ”よろしく、アメリカンでスピーディーなナンバー。5曲目から間髪入れないマスタリング状況からしてもライブユースであることは必定。この5,6曲目はライブで聞くと気持ちいいんですよね。しかし、前作前々作のサンプリングマニアぶりがすっかり影を潜めるストレートなロックンロール仕様。音源独自のこだわりも少しほしい気がしますが、高望みは不要っすね。
7.FLAKE
実質上のアルバムラスト曲。今のMY WAY MY LOVEの総決算的な曲といわれており、ライブでは10分以上のバージョンもある魂のこもった1曲。(このアルバムでは約7分)イメージは退廃的で究極に美しい壊れてしまいそうな感情を切々と吐き出す熱情溢れる静かなロッカバラード。Sonic Youthの曲にこんなイメージの曲があったような。ヨーロッパツアーのDVDの中盤にある静かな曲はこれです。
8.VG-10


いやぁ、ほんとに傑作です。dedicatedはあれで洗練されて完成されてた気がしますが、今回はより先鋭的に、より黒く、重く、発展されたという意味で、僕の中では現時点で超えました。(HS01は音が小さかったし・・・純然たる国内版で今回は音量もマスタリング・クオリティもバッチリ!)

今回この音源用にレコーディングした曲は、大脇氏のブログによれば12曲。VG-10は別として、7曲しか使用していませんので、A WAKEを超えるポップチューンの「mayoigumo」や「blue lemon in the red sky」「THE WALL」「A DAY」、北米ツアーDVDでも収録されている「tenderly」やその他の曲、ヨーロッパツアーDVDに収録されていた「otokonokoonnanoko」風の曲、など。まだまだ楽しみがいっぱいでもう、おなかいっぱいです。